今回、ご紹介するのは「本を守ろうとする猫の話」です。
この作者の夏川草介さんは、「神様のカルテ」を書いた方です。コロナ禍を経て考えられたファンタジー小説になります。心温まるハートフルファンタジーになっています。
本を読むことで猫が話しかけてくるような夢の世界に行きたい人、本があまり好きではないけれどファンタジーなら大好きというそこのあなたにぜひ読んでもらいたい一作です。
そしてこの記事を最後まで読んでこの本を読んでみたいと思ってくれたら僕も嬉しいです。
それでは本の紹介をしていきましょう。
あらすじ&概要
幼い頃に両親が離婚した後、小学生に上がる頃から祖父と2人暮らしの高校生、夏木林太郎。
祖父は、「夏木書店」という古書店を営みながら林太郎と暮らしてくれた。
しかし、その祖父が突然にこの世を去ってしまう。「夏木書店」という古書に囲まれた世界に一人ぼっちになってしまった林太郎は、学校へも行かず閉じこもってしまう。
そんな中、書店にはいるはずのないトラネコが姿を現して林太郎に話しかけてくるのだ。
困惑する林太郎に、トラネコは言う。
「本を助け出すためにおまえの力を借りたい」
林太郎は、戸惑いながらもトラネコの言うがままに本を助け出すため迷宮の世界へと足を踏み入れていく。
著者 | 夏川草介 |
出版社 | 小学館 |
発売日 | 2022年09月11日 |
ページ数 | 288ページ |
サイズ | 10.5 x 1.4 x 15 cm(文庫版) 13.7 x 1.8 x 19.5 cm(ハードカバー) |
ジャンル | 青春・ファンタジー・ライトノベル |
この本を手に取ったきっかけ
この本との出会いは、僕が特にお世話になった就労支援員のスタッフさんから教えていただいたのがきっかけです。小説が好きで本を書くこともあるというお話をしたところ、そのスタッフさんも本を読むのが好きだと教えてもらいました。
特に一番好きな本だと教えてもらったのが「本を守ろうとする猫の話」でした。
彼女曰くネコの表現が良いという本好きにはたまらない紹介方法、また尊敬している支援員の方からのおすすめということでこれはぜひ読んでみたいと思ってこの本を手に取ってみました。
この本を読んでみた感想
この本を読んでみて、感じたのは人にとって言葉とは?本とはなんなのか?というお話しだなと感じさせられました。現代では、人々の生活が忙しくなり、本を読まない人が増えました。また紙ベースである本というもの自体が消えつつあります。
その中で本は一体、人にとってなんなのかを考えさせてくれるお話しだったなと僕は思いました。
文章の雰囲気や流れを読みながら「神様のカルテ」を書かれた夏川先生の人柄を感じさせる雰囲気を感じました。
また案内人が少し落ち着いた人間の言葉を喋るトラ猫というのも面白いなと感じました。
トラ猫に導かれて本を救いに行くというちょっと変わった案内人に導かれ、時には同級生の女の子と一緒に本を解放していく彼らの冒険にきっと何か気がつかされるものがあると思います。
心に残った言葉
”人を思う心”それを教えてくれる力が本の力だと思うんです。
その力がたくさんの人を勇気づけて支えてくれるんです夏木林太郎
作中の中で一番、僕が心を打たれた言葉です。
この作品の中では林太郎とトラネコ、そしてヒロインである柚木が本を救う冒険をします。
でも本は救われたけれど、最終的に本を救いだした=人が救われるではない現実を林太郎は突きつけられます。それならば人にとっての本はなんなのか?
出会った人々や乗り越えてきた冒険の中で林太郎が見つけた答えがこのフレーズに詰まっています。
僕も小説が大好きな人間なのですが、消費される、あるいは難解なレッテルを強く感じていて、人の心に残る文章ってなんなんだろうと思うこともありました。
でもこの本をきっかけに心にふわっと何か灯りのようなものが灯ったようなそんな気がしました。
本が好きな人・におすすめな一冊!!
最初に作者の夏川先生が感じていたのは、コロナ禍を通して荒んだ医療現場や患者の方々を見て、「人の心から何かが失われている」と感じて書き始めたのがこの小説だそうです。
そして夏川先生が原点に立ち返った時に見つけたのが「本」という存在でした。
最後まで読んでみて感じたのは、本というものがとても好きな人、あるいは、気持ちが落ち込んでいて王道なファンタジーに浸りたい人には必読の小説ではないかなと感じました。
続編も出ているようなので、ぜひこの本を手にとって林太郎やトラ猫と共に本を想う旅に出かけてみてはいかがでしょうか?
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