願いが叶う不思議な樹が織り成す物語「クスノキの番人」

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心に響く作品紹介

自分の目の前に願いが叶う方法があるとするならば、あなたはどんなことを願いますか?
フィクションではありがちですが、いざ自分に問われるといろいろな願いをすぐに言える人や願いと言ってもパッとは思いつかない人もいるのかなと思います。
そんなフィクションにありがちな願いをかなえるですが、それでもしっかりと実のあるストーリーで描いている東野圭吾作「クスノキの番人」は、読む人をほっとさせるある樹にまつわるエピソードを立ち上げてくれます。

あらすじ&概要

不当な職場での扱いを受け、解雇されてしまった主人公の青年・怜斗はその腹いせに、解雇された職場の機械を盗み持ち出そうとします。しかし、そのことが見つかり、警察に逮捕されてしまう怜斗(れいと)。
万事休すかと思った彼のところへ見知らぬ弁護士が訪ねてきます。
依頼人の言う通りにすれば、その依頼人があなたに便宜を図り、釈放させてくれると告げる謎の弁護士。見に覚えのない展開に訝しむ怜斗ですが、このまま弁護士の提案に乗らなければ刑務所に入ってしまいます。
怜斗は不審に思いながらも弁護人に従って釈放されると、依頼人が待つホテルへと案内されます。
そこで出会ったのは伯母だという年配の女性・千舟(ちふね)です。
彼女は代々受け継がれるクスノキの番人をしてほしいと告げます。
クスノキの番人とは何か?
そして今まで良い人生を歩んでこれなかった怜斗に番人が務まるのでしょうか?

著者東野圭吾
出版社実業之日本社
発売日2020/3/17
ページ数456
サイズ文庫
ジャンルファンタジー・ミステリー

この本を手に取ったきっかけ

この本を手に取った時は、直近で勤めていた仕事を適応障害と自律神経失調症の発症でやめてしまい、心身ともに疲れている時でした。
ちょうどそんな時に刊行されたのがこの小説だったのですが、主人公の玲斗も仕事では不運な目に遭ってばかりで直近の仕事では警察に捕まるような展開になっているところに、クスノキの番人の仕事が舞い込みます。そんな彼と自分を照らし合わせ、次に自分がやる仕事は彼のようにちゃんと向き合えるような運命の仕事がくるといいなと思いながらこの本を手にとりました。

この本を読んでみた感想

人の想いとは難しいもので上手く伝えられなかったことや理解しあえないもどかしさなど複雑に絡み合った中で日々何かが伝わったり忘れ去られたりしていっているのだなとこの小説を読んで改めて感じる機会ができたなと思いました。
ひょんなことから、クスノキの番人となった怜斗は自分のルーツを知ることで、周囲の景色が少しずつ見えるようになったような気がしました。やっぱり未来に進むには、まず今までの経緯や環境などを振り返り、何を伝えたいのか、何をやっていきたいのか、今どこにいるのか過去から現在を掴まないと先へは進めないのかなと思ったり。東野圭吾さんは大好きな作家ですが、ミステリーではなくファンタジーヒューマンで新しい境地を気づかせてくれるとは思わなかった一作です!!

心に残った言葉

「忘れるってことです。そんなに悪いことでしょうか。不幸なことでしょうか」

「クスノキの番人」怜斗

人はその人が感じた想いや体験した出来事を記憶としてつないでいく存在です。
忘れたい過去は忘れられないのに、忘れたくない想い出は気づいた時には忘れてしまっていたりと記憶の継承というのは難しいものです。
でも忘れるからこそ次にまたその想い出に出会った時は色鮮やかな瞬間を見せてくれるものかもしれませんね。
小説のクライマックスはそんなメッセージを感じさせる瞬間がありました。

記憶をつなぐとは?そんなヒューマンドラマに触れたい人におすすめな一冊!!

伝えたい歴史や言葉、経験を仕事や日々の暮らしについて届けたい人がいる、あるいはある人やものから受け取りたいと思っている人はこのストーリーがドンピシャなのかなと思います。
改めて「記憶」の意味深さや伝えることの難しさや大切さなんかを感じさせてくれる物語じゃないかなと思いました。
特に「記憶」について悩んでいる人には必見のストーリーだと思います。そんな方にぜひおすすめの一作です!
また東野圭吾作品が大好きだけどミステリーに疲れたなって方にもちょっとミステリー休めにおすすめです!

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